デシベル(dB)は不便かも


音とか電波とかの信号の相対強度表示にデシベル(dB)が良く使われる。 これが困ったもので、ルールを知らない人には直感的に大きさが分からない。 それはなぜか。log表記とマジックナンバー使用の二つの理由がある。 オーダーが何桁も変わる値の表記にlog表記を使うのはやむを得ない としよう。 しかし、それにマジックナンバーの10を乗じる(だからデシ)のが 問題である。 マジックナンバーというのは、情報送信側と受信側が共に その情報を把握していないと情報伝達が混乱する。 一般には使うべきではないものである。
先程まあやむを得ない言ったlog表記も、本当に必要かどうかは実は疑わしい。 音や電波の分野でデシベルで表している信号のレンジは高々 100dBつまり1対100億、使用頻度の高い0〜20dBのレンジでは 1対100である。 100dBというよりは100億倍、 3dBというよりは2倍と表現した方が直感的でわかりやすい。 なに、0がいっぱいあると数え間違えるって。 万とか億とかの分かりやすい言葉があるのだからそれを使えばよい。 有効数字×10のべき乗表記をしてもよい。 これなら誰にでも誤解なく伝えられる。 人間の感覚器は入力と出力が対数関数 (ウェーバーフェヒナーの法則)であるから log表記が適切であるという意見もちらほら見かける。 感覚器(目や耳)によって定数が違うので、 定数のことを意識していない場合は的外れの意見である。 また、デシベルだと乗算が加算で出来るメリットを主張する意見もある。 しかしデシベルの利用者に 有効数字1桁の乗算が暗算でできない人がいるだろうか。 もしそのような小学生以下のエンジニアがいたら、 そういう人と一緒に仕事をするのは遠慮したい。
その方面のプロでも困っているらしいが、 デシベルは相対比較値なので 比較する対象を定義しておかないと意味がない。 それなのにオーディオ/テレビジョン/無線の各業界で 絶対値を表すために用いている場合がある。 この場合は0dBの定義をしておかなければ話が通じなくなる。 0dBの定義もマジックナンバー問題と言えるだろう。
電力比と電圧比とでマジックナンバーが10と20で変わるのも混乱の原因となる。 実はマジックナンバーは10のままで変わっていないのだが、 抵抗(インピーダンス)が固定という暗黙の前提があるため、 結果的にマジックナンバーが20に変わったように見える。
一般人に分かりにくいという致命的な欠点を持ち、 専門家にとっては飛び抜けた利点のないデシベルをなぜ使うのだろうか。 おそらく、大した内容でもないのに内輪にしか分からない言葉を使って 自らの価値を誇大に見せたい連中の性癖から来ているのだろう。 まっとうな研究者や技術者を自負するならば、 素直に100倍とか5倍とかあるいは絶対値で1Vp-pとか言えばよいと思う。 デシベルを多用するのは、 実力のないのを隠そうとするあさましい輩と思われるリスクがある。


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