戦車導入後の一年戦争


旧世紀戦車の120mm砲オリジナルの徹甲弾APFSDSは 現地工作班では作ることはできなかった。 砲弾の無い戦車はキャリフォルニアベースに送られた。 機動兵器のなくなったランバ・ラルは白兵戦でホワイトベースに挑むも戦死。 その後、ガンダムにより黒い三連星も全滅させられてオデッサの戦闘は 連邦の勝利に終わる。
キャリフォルニアベースでは送られてきた戦車を研究し、その装甲がなぜガン ダムのビームライフルに耐えられたのかを突き止めた。 戦車の装甲材はチタン合金と樹脂の複合材で、 ザクのチタン合金装甲と強度的には大差なかったのだが、秘密は厚さにあった。 ザクの装甲の10倍以上の厚さだったのである。 ザクの片足程度の大きさでザクと同程度の重量を持つはずである。 装甲強度はドムやガンダムのものを遥かに越えており、 後に作られるビグザムのものも凌駕していた。 この重装甲は宇宙での使用を前提としたモビルスーツでは、 とても受け入れられるものではなかった。 質量が10倍になれば、 同じ加速度を得るためにはスラスター出力が10倍必要になり、 推進剤もそれに比例して消費される。 そのような大出力スラスターと大量の推進剤を モビルスーツのサイズに詰め込むことは到底不可能であった。
一方、ガンダムの装甲を易々と貫通した砲の研究は役に立った。 ポイントは高速の硬い弾丸であれば良いという事だった。 宇宙では質量弾を発射するとその反作用で 発射母機の姿勢と軌道が変わるのが問題となる。 そこで反動の少ない砲、つまりビーム砲や低初速砲が主に使われていた。 しかし、連邦のモビルスーツの厚い装甲に対抗できるのが 高速質量弾であることが分かった今、砲の開発方向性が変化したのである。 戦車のオリジナルAPFSDS弾は強力すぎてガンダム程度の装甲に対して用いるのには 過剰性能であることが分かった。 APFSDS砲弾には羽根がついているが、空気のない宇宙では姿勢安定の役に立たず、 着弾する前に砲弾の向きが変わり性能を発揮できないことも分かった。 そこで、AP弾を使用した120mmL54ライフル砲が開発された。 この砲の砲身には文字通りライフルリングが切ってある。 空気のない宇宙で使っても、砲弾の回転によるジャイロ効果で砲弾の向き が大きく変わることはない。 ライフル砲であっても十分に弾速が大きいので 連邦のどのモビルスーツの装甲も貫通可能であった。 欠点は宇宙では砲身の十分な放熱ができないため、連射が難しいことだった。 この120mm砲はドムには問題がなかったが、重いためザクには少々扱い辛かった。 そこで、後になって88mmL71砲も開発された。 88mm砲でも20cm超の対鋼貫通力( =ガンダリウム合金換算で7cm ここ参照 )を持っていたので 最大装甲厚5.4cmのガンダムやジムの装甲を貫通することができた。 ただし120mmに比べて炸薬量が減ったため、 貫通したが相手はまだ平気で動いているということはあったらしい。
戦車のFCS技術もモビルスーツにフィードバックされた。 光学式FCSは使用可能距離が3000m程度のため、 レーダーが発達した宇宙世紀では過去の遺物であり、忘れ去られていた。 ところがミノフスキー粒子によりレーダーが無力化した 今となっては実は最も有効なモノであったのだ。 前世紀においても、初弾命中率は5割を超える性能をもっていた光学式FCSは、 宇宙世紀の技術でリファインされ、 3000m以内での初弾命中率は8割を超えるものとなった。 8割というのは狙ったところに当る確率で、どこかに当れば良いというのであれば、 戦車に比べて的のサイズが大きいモビルスーツ相手ではほぼ10割であった。 これにより、連射性能の低さは殆ど問題にならなくなった。
戦車自体もそのまま量産された。 ジャブローのような湿地のジャングルでは戦車は役に立たなかったので、 戦車はもっぱらアフリカ大陸とユーラシア大陸で活躍した。 特に、アフリカ戦線では連邦のモビルスーツを 100機以上撃破した超エースが出現した。
もともと戦車の形状をしていたマゼラアタックは、 その車体を利用した自走砲として再生利用された。 マゼラトップとその取り付け部を取り外し、 オープントップの戦闘室を設け、120mm砲か88mm砲を塔載した。 これは現地でも可能な工作だったので、 殆どのマゼラアタックがこの改造を受けた。 改造マゼラベースは、前世紀の自走砲にあやかってナスホルンと呼ばれた。 元がマゼラベースなので、車高が立つ上に装甲は薄く、 モビルスーツ相手の機動戦闘には不向きだったが、 まちぶせ攻撃や遠距離の砲戦ではモビルスーツと互格に戦えた。 問題は、無砲塔なのでFCSとの連動が砲自体の微調整範囲に限定されることだ。 砲単体でも上下方向は40度近いレンジを持っていたが、 左右方向の砲身移動レンジは狭くすぐに破綻してしまう。 キャタピラ駆動系との連動は制御遅れ時間が大きすぎてうまくいかなかった。 ところが、運の良いことにモビルスーツの機動は上下方向主体なので、 この破綻は重大な欠点にはならなかった。 接近するまでは相手が戦車か自走砲かは分らないので、 戦車かもしれない相手に対し、 速度の出せない左右方向の機動で対抗する危険をおかす モビルスーツパイロットはいなかったのだ。
マゼラベースは車体が大きいため、砲一門を塔載する以上の余裕があった。 余剰のペイロードは兵員や弾薬の輸送に使われるのが一般的だったが、 現場の判断で装甲板の増設をした部隊もあった。 オープントップの戦闘室に屋根をつける改造がまず行われた。 防御の意味はほとんど無かったが雨避け、虫除けには役立った。 前面に200mmのチタン合金あるいは 鋼の増加装甲を付けたものはエレファントと呼ばれた。 鋼のエレファントはジムのビームスプレーガンまでは弾くことができた。 200mm厚の板などそうそう簡単には入手はできないので、 撃破したジムのガンダリウム合金の盾を何枚も重ねて増加装甲とした エレファントもよく使われた。 ガンダリウム合金のエレファントはガンダムのビームライフルを弾くことができた。 木馬と呼ばれていた連邦の船は後の第二次オデッサ攻防戦で撃沈されたのだが、 わずか3機しかMSを搭載していなかったはずの船の残骸から100枚以上の ガンダリウム合金の盾が発見された。 当作戦に参加したマゼラベース隊は思わぬ戦利品に大喜びであった。 部隊所属の全車両をエレファント化してもまだ余りがあったと報告されている。 戦闘後には木馬は戦闘艦ではなくて実はガンダム用盾の輸送艦だったとの 笑い話が作られた。馬の形もその笑い話のよりどころになった。
木馬を撃沈したのは88mm砲装備のザクの活躍であった。木馬は高々度へ 離脱しようとしたらしいが、88mm砲の長距離精密射撃により両エンジンを 打ち抜かれて低空に戻ったところで、 マゼラベース改ナスホルンにとどめをさされたと報告されている。

ジオン製戦車と自走砲の活躍により、地球連邦はジオンを地球から排除できなかった。 そればかりか奪取したオデッサを再びジオンに占領されてしまい、その他の地域も徐々 にジオン勢力下になっていった。無線通信やレーダーが無力化されているため、 前世紀ほど航空機は戦車にとって脅威ではなかった。ミノフスキー粒子散布下 の重力下有視界戦闘では戦車は最強の兵器たりえたのである。ジオンはユーラ シア大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸、北米大陸をその勢力圏に収め、 連邦の最後のそして最強の拠点ジャブローに迫りつつあった。ジャブローでは 戦車は機動がほとんどできないため、モビルスーツ戦で勝敗が決するであろう。 その場合は機動力で勝るドムや、水陸両用のズゴックを擁するジオンが有利で ある。スペースノイドの自治権獲得は目前である。
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ガンダムの嘘ボトムズの本当 88mm砲で最新戦車を倒せるか