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88mm砲で最新戦車を倒せるか

ここで言う88mm砲はタイガーI戦車の56口径の88mmではなく、キングタイガー(タイガー2)やエレファントに搭載されていた71口径の88mmだ。結論から言うと砲塔ではなく車体の側面や後面ならばM1A2エイブラムスだろうが、レオパルド2A6だろうが、メルカバ3だろうが貫通できる。APCR(鋼貫通力28cm)を使わなくてもAP(同24cm)でも大丈夫だ。これにはちょっと驚いた。71口径の88mm砲の性能は10年後に作られたM48パットン戦車の90mm砲より優れており、結局90mmクラスで88mmL71の性能を越える砲は現在まで作られていない(砲弾の性能による貫通力向上は除外)。
近頃の戦車は歩兵の対戦車兵器にやられないように対HEAT弾への防御性能は側面や後面でも向上しているのだが、単純なAP弾への防御はそうでもない。流石に前面は120mm砲の直撃を考慮して綱換算で80cm以上の装甲をもっているが、それを側面や後面にも採用する訳にはいかないのだ。そんなことをしたら戦車の重量が100トンを越えてしまい、機動性が落ちてしまうからだ。そんな訳で昔ながらのAP弾を使う88mm砲が未だに有効だったりするのだ。
理屈では倒せるのだが88mm砲搭載戦車と現用戦車が同時に存在する状況などゲームの中でも存在しないので、実際に現用戦車をブチ抜けるかを試すことが出来なかった。ところが最近SPMBTなるフリーのゲームの存在を知った。これはDOSゲームのSTEEL PANTHERSをWindowsに移植したSPWaWから派生した現代戦車戦のゲームだ。シミュレーションできる時代は1946年から2020年だ。1946年からだから、当然ドイツ軍のキングタイガー戦車は存在しないが、狙い目は戦後しばらくドイツ軍の中古戦車を運用していたヨーロッパ諸国なのだ。フランスがしばらくパンサー戦車を使っていたのは知っていたから、まずはフランスを調べてみた。するとパンサーの他にヤクトパンサーを使っていた。こいつの備砲はキングタイガーと同じ88mmL71だ。他にもチェコやハンガリーで3号や4号やヘッツァーが使われていたことも分かった。
早速フランス軍としてプレイしてみたが、M47パットンやT-54Bや20ポンド砲搭載センチュリオンならば互角以上に戦えるのだが、M1エイブラムスクラスだとFCSの性能差で近付く前にやられてしまう。勝ち目はほぼない。
黒騎士物語でたまにあるような零距離での乱戦ならば勝ち目があるかもしれない。乱戦ならば無砲塔のヤクトパンサーは辛いので、砲塔装備のパンサーの方が良いだろう。パンサーの70口径75mm砲でもAPCRを使えばM1の車体側面をブチ抜ける。パンサーは現用のどの戦車よりも発射頻度は高いので、戦車の車体がぶつかりあるような乱戦なら勝機はないこともない。現代戦ではそのような状況は考えられないが。
2007年になってSPMBTのVersion3のパッチが出て多くのバグがfixされた.そのバグfixの中にヤクトパンサーのVision性能の修正が含まれていた.実はヤクトパンサーにはバグがあってVision性能が20になっていたのだ(本来ならば0のはず).20というのはT-54やM-60で使われ始めた映像センサーを示す.こんなのが第二次大戦中の戦車についている訳がないので,明らかにバグだったのだが,ありがたい装備なのでこれまで活用させてもらっていた.1950年台のセンサーのついていない戦車(英国のセンチュリオン,米国のM-47,ロシアのT-10やJS-III)をセンサーを使ってアウトレンジで撃破していたのだ.88mm砲の遠距離射撃精度とその貫通力が生きる使い方だ.バグfixによりVisionが0になってしまったヤクトパンサーは他国の戦後直後の戦車と変わらない性能となってしまった.もう楽なアウトレンジ撃破は出来ず,互いに視認できる距離での撃ち合いとなる.これは装甲が十分でないヤクトパンサーにはなかなか辛い.
最近になって思い出したのだが、もしかしてヤクトパンサーのセンサーはノクトビジョンのことか?とひらめいた。これはたしかに第二次大戦末にドイツ軍戦車に搭載されたことがある。だとすると、Vision性能20と言うのはバグではなかったのかもしれない。恐るべしドイツ軍。
モビルスーツ対戦車