比例道
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diary/20060531

オーディオマニアって

いやはや,オーディオマニアの中には電波な人がいるものだ(URL参照).かく言う私も10代の頃はオーディオマニアだった.長岡鉄男さんのエンクロージャー製作記事に感銘して,汗だくになって木を切っていたものだ(長岡さんは今でも尊敬すべきエンジニアであり,アーティストだ).そのうち,音の違いを楽しむという作業に疑問を感じてオーディオマニアから卒業した.卒業のきっかけになった言葉が二つある.

  • オーディオは原音こそ全てだ.まずはコンサートに行こう.そしてコンサートと同じ音が出るようにオーディオセットを組み上げる努力をすべきだ.
  • 音楽は中身こそ全てだ.良い曲はポンコツラジオから聞こえてきても人を感動させるものだ.

どちらも真理だと思った.この二つの言葉を聞いた後では,ケーブルを変えたり,プラグのメッキを気にしたりが虚しくなった.オーディオマニアの正常進化は前者の言葉に従うことだろう.音楽関係の仕事をするプロも前者の道を歩むことになるだろう.ただし,一般人は前者の道を歩んでももちろん良いが,後者の道を歩むのも悪くない.オーディオを愛するのではなく音楽を愛するというのも素晴らしい考え方だ.
ところが,どちらの道にも進まずトンデモ系に進んだ方々が現在のオーディオ業界を支えている.原音再生を目指す訳でなく,高価な(実は全然高価ではなく騙されて高く買っているだけ)機材を購入することで音が変わるのを楽しむ人々だ.彼らは音が変われば価値を感じるので,ひたすら機材を買い続けてくれる.オーディオ業界にとっては貴重な人々だ.100円のケーブルよりも新たに買った10000円のケーブルの方が優れていると思いたがる.実はどちらも原音とはほど遠い音を出しているにもかかわらずだ.評価が価格に引きずられるのは愚かではあるが,これはオーディオマニアだけのことではない.値段が高いからと品質が劣るものをを選んで喜んでいるユーザーは他の方面でも沢山居る.以前散髪屋のおばちゃんがドコモの携帯を使っているけど音質が悪いのよと言っていた.でもNTT製で高価なのだからAUなんかより音は良いはずなんだけどねとぼやいていた.本当のことを説明してあげようかと思ったが,ひげをそられている最中だったのでできなかった.車選びでも同じようなことはある.オーディオマニアだけが特に愚かしいという訳ではないのだ.
最近困っているのは,ミュージシャンがトンデモ系オーディオマニアと同じ考えで仕事をしていることだ.なんかプラグとか電源とかケーブルに無意味なこだわりを持っている.そんなことで音が変わると思うのは気のせいだとか,変わったとしても良い方向に変わっているとは限らないよとか教えてあげたい.彼らに共通しているのは,決してコストが安い方には機材を変えないことだ.コストが安くても良いものがあるはずなのに.結局音楽よりも価格に引きずられているのだ.一般ユーザーがそうなっても,それは個人の趣味で済まされるが,音楽のプロであるミュージシャンが音楽の本当の質を分からないのは情けない話だ.