比例道
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diary/20060819

オットーサイクルの熱効率と圧縮比

F&Fの掲示板でノッキングの話題が議論されていた.レシプロエンジンでは圧縮比を上げていくと,ノッキングの悩みが出てくる.なぜノッキングなどの困ることがあるのに圧縮比を上げたいのかと言うと,熱効率を上げて最大出力を上げたり,燃費を良くしたりしたいからだ.車に積まれているガソリンエンジンはオットーサイクル風に動いていて,その熱効率は概ね以下の式で表される.
熱効率=1−1/(圧縮比^(比熱比-1))
式だけ眺めていてもつまらないから数値をあてはめてみよう.車のエンジンだと圧縮比は7から12くらい.比熱比は混合ガスの物性値でいろいろな値を取りうるが1.3くらいとしておく.
圧縮比熱効率
744%
846%
948%
1050%
1151%
1253%
こんな具合で熱効率は変化する.圧縮比をたとえば8から9へ1増やすとピストンにかかる圧力は1割以上増え,それとは別に燃焼温度は上がり,それらに耐える作りが必要になる.これは結構大変なのに増える熱効率はたったの2ポイントだ。工学屋さんで2ポイントをたったと思う人はどうも少ないらしいが,私はそう思う性格だ.私は「2ポイントの出力差くらいなら,運転技術でカバーして速く走ってやろうと思わないのか」「数%の燃費のような小さいことを気にするなどみみっちい.もっと大きな大事なことを考えるのが男というものだろう.」と思うタチだ.それが災いしてか,標準的な研究者や技術者とはなかなか価値観を合わせられない.互いの論文上の評価尺度を合わせようなどという表面的なことはもちろん異議はないのだが,論文の背後にある「こんなことをしてなぜうれしいのか」という点では意見が食い違う.
そういう訳で私が趣味で設計するエンジンはやたら余裕があって,怪しい材料や工作精度の悪い部品で組んで,変な燃料を入れてもとにかく回るというものになりがちだ.本音を言うと細かい計算が面倒だから安全率に余裕をみて(み過ぎて)いるだけだ.最近知ったのだが,ロシアのAK-47という銃が同じ設計思想で作られているようだ.何でも基本部品は8個しかなく,町工場で生産でき,子供でも組み立てられるとのこと.設計者のミハイル・カラシニコフ氏は戦車長として実戦を経験した後に銃の設計に携わったとのこと.この経歴ならではの設計思想と言える.私も30代までは営業や機械工をしていて40代から研究畑に入ったので考え方が似ているのかも知れない.