比例道
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diary/20060906

うまい支配の方法(ワーキングプア関連)

第二次大戦の記録によるとスターリンによるロシア国民(ロシア内に住む他民族)の虐殺が1700万人,ヒトラーによるユダヤ人のそれが600万人とのことだ.殺される側にとっては合計が何百万人だろうと関係なく,自分がそれに入っているか否かの問題なので,人数の多寡を議論しても仕方がないのだが,あえてこの人数の多さについて議論してみたい.というのも,ドキュメンタリー映像でユダヤ人収容所の様子を見ると監視している兵隊がひどく少ないのが気になったからだ.そのとき思ったのが「全員で飛びかかれば兵隊をすぐに制圧することができるのになぜしないのだろう」ということだ.アメリカの同時多発テロでは,ハイジャックされた航空機の乗客がテロリストに抵抗してテロの完遂を防いでいる.何もしなければ100%死ぬと分かっている極限状況では,人は死をも乗り越えた行動を成し遂げられることをこの事件は証明している.それなのに,ユダヤ人収容所でなぜこのような抵抗がなぜ少なかったのか想像してみた.おそらく2つの理由からだろう.
(1)最後のそのときまで殺されることを収容者に教えなかった.殺される直前まで(偽の)希望を持たせていたのだ.死ぬと決まっていない状況で死を賭してまで抵抗する人は少ないだろう.
(2)監視にユダヤ人から選抜した人間を使っていた.これはドキュメンタリー記録で知った事実だ.これによって監視側兵隊の人員不足を補っていたのだ.選抜された方は「自分だけは生き抜く可能性が高くなる」と信じて仲間を殺す手伝いをしていたのだ.悲劇だ.
いずれにせよ,支配される側に少しの希望を持たせることがポイントだ.パンドラの箱の寓話で「パンドラの犯した最大の罪は最後に希望を箱から飛び出させたことだ」というのがあるが,なるほどと実感できる.と,ここまでなら昔の歴史の話で済むのだが実は現在も同じことが起きつつある.派遣社員やパートの労働者の低賃金の問題だ.彼らの中には生活保護水準である200万円弱よりも少ない年収の人もいて,ワーキングプアと呼ばれる.彼らが不当な条件で働いてくれるのは,努力をすれば人並みの収入が得られるかもしれないという希望を持っているからだ.ところが,実際は努力をしても収入が上がる訳ではないようだ.ひどい話だ.ここにも第二次大戦で使われた支配の方法が狡猾に取り入れられている.
ワーキングプアほどの酷さではないが,一般企業内にも似たような支配方法がうまく使われている.いつかは昇給するだろうと信じて一生懸命働いているサラリーマンの人も実は同じように支配されている可能性がある.実際はどうだろうか.企業によって状況は違うだろうが,ちゃんと働いて結果を出している人がみんな報われているだろうか.