比例道
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diary/20070126

京都アパホテル耐震強度偽造疑惑

また耐震強度偽造疑惑騒ぎでうんざりだ.うんざりしているのは偽造ではなく,このような単純明快なことであれこれ騒ぐ連中のことだ.構造物の強度は手間さえ惜しまなければ,いくらでも精密に測定・計算できる.改ざんしただの,言ったはずだいや言わないだのガタガタ言わずに黙って測定・計算すれば良い.真実はひとつだ.
耐震強度疑惑騒ぎのときに話をややこしくするのが,CADやらコンピューターを盲信している連中だ.CADの計算はたいていの場合は参考程度にしかならないのを知らないらしい.私はCADは必要があれば使うユーザーであるが,エンジン設計用のCADシステムそのものを作ったCADシステム製作者でもある.私のCADシステムはお絵かきツールではなく,結果は数値で出てくるものだ.エンジンに関わる数値はいろいろなものがあり,それぞれが複雑に絡み合っている.絡み合いが最も分かりやすいのがストローク長だ.ストローク長は自由に選べる訳ではない.ストロークをどんどん大きくしていくと,同じ回転数ならピストンの移動速度が大きくなる.この速度がある値を超えるとピストンリングとシリンダー壁間の油膜が切れて潤滑が破綻してしまう.そのため回転数とストローク長はトレードオフの関係だ.ストローク長を大きくするとコンロッドが長くなって座屈しやすくなるのも問題だ.これを防ぐためにはピストンにかかる力を減らさねばならず,そうなるとピストン径を小さくするか爆発圧力を小さくするしかない.どちらにしても面白くない.こう考えると高回転型エンジンのストローク長が小さいのは極めて合理的な理由からだと分かるだろう.実際問題としてコンロッドの座屈なんてのは些細な問題で,コンロッドにかかる力はそれを受け止めるクランクシャフトに最も影響する.エンジンの中でもっとも頑強に作るクランクシャフトであるが,回転中は爆発の圧力でたわむ(曲がる)のだ.その変形はクランクシャフトを支える軸受けに負担をかけ,軸受けが許容できる範囲内に変形を押さえ込まないといけない.ここでストローク長に戻るがストローク長をとれない場合にピストン径を大きくすることで排気量を確保すると,クランクシャフトの長さが大きくなって変形が大きくなってしまう.長いものほどたわみやすいからだ.さてどうする?うまい具合に目標スペックを満足する数値を決めるのは至難の業だと分かってもらえただろうか.これらはエンジン設計の計算のごく一部であるが,こんな複雑な計算を昔は手計算でやっていたのだ.これらを自動計算してくれるCADシステムを作りたくなるのは当然の欲求だった.CADシステムを作った経験から言うと,強度計算(建築屋は構造計算というらしい)CADの場合,CADシステムが想定しているモデルに当てはまらないモノの計算結果は近似値でしかない.正確に強度計算をしたいなら,実際のモノに当てはまるモデルを作ってそれを計算するしかない.普通はそんなことをする時間(コスト)が惜しいから,近似値を得たあと安全率を乗じてその値を用いる.
で,不思議なのは耐震強度が1.0とか0.8とか言われる建築系計算システムの精度だ.機械ほど設計自由度がない建築物とは言え,いろいろな形のものを作るのであるから,計算システムが想定しているモデルに当てはまるものもそうでないものもあるだろう.その辺りのばらつきを吸収するためには,安全率を大目にとるはずだ.実際それ以外に合理的な方法はない.かなり大きい(2〜3)の安全率を使うべきだ.ところが報道によると耐震強度の基準値を1.0とした場合,0.8だと補強工事が必要になる不良建物だと言う.もし安全率に2を使っていたなら,本当に危ない閾値は0.5であるから0.8でも騒ぐ必要はないのだ.航空機の設計ではあるまいし,結果がたった20%違っただけで破綻するような耐震強度計算式と安全率をどうして使っているのか理解に苦しむ.この耐震強度計算式と安全率の決め方がおかしいと誰も声を上げないのは,建築業界の圧力でもかかっているのか.おかしいのが分からないほど建築家は頭が悪いのか.
ここから先は私の極めて乱暴な意見を述べて本エントリーを結ぼう.建築家なんてものは機械の3次元設計に比べて程度の低い2.5次元の設計しかできない低脳で,おまけに自分を芸術家と勘違いして意味不明なデザインをありがたがる大馬鹿野郎だ.建築家をエンジニアと呼ぶなんてアホらしくてやってられるかい.べらぼうめい.