比例道
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diary/20071120

お風呂で見た怪しい人

私は平日は公衆浴場を利用する.広い湯舟が大好きなのだ.いつも早めに行って一番風呂をいただく.誰もいない湯舟につかっていると良い気分になれて,一日の疲れがすっーと取れていく感じだ.その公衆浴場で2,3ヶ月に1度怪しい人に出会う.私が入ると彼は湯舟につかっている.私が身体を洗っている間に彼は湯舟から出てくるのだが,これからが怪しい.身体を洗う風でもないのに,ずっと洗い場の椅子に座っているのだ.私が身体を洗い終えて,湯舟に入ってもそのまま何もしない.たまに桶のお湯をじゃぶじゃぶ手で動かしているがそれだけだ.私が湯舟から出て風呂場を出ていくまでずっとそうしている.一体彼は何をしているのか(する気なのか)気になる.彼の出現は1年前からだが,いつも私が先にあがってしまうので,真実は分からず終いだった.
今日,風呂場に行くとまた彼がいた.挨拶をしてみたが返事はない.日本人の顔付きをしているが,外人なのだろうか.今日は湯舟にお湯を張った使用人さんが調整をしくじったようで,湯舟のお湯がいつもより少なかった.私は湯舟のお湯が少ないときは適切な量に増えるまでお湯と水を水栓から出して調整することにしている.水栓を開け放したまま風呂場を出ると閉める人がいない場合,お湯が湯舟からあふれて勿体ないので適量になるまで湯舟につかることを自分に義務づけている.そこで湯舟の中から例の怪しい彼を観察できたのだ.直接見ると恥ずかしいので,窓ガラスに写った少々ボケた姿を見ていた.今日はお湯が適量になるまで40分かかったので,私は40分もつかって半分のぼせかかったのだが,彼を長い間観察できた.その間彼はずっと身体を洗うでもなく,髪を洗うでもなく,桶のお湯を混ぜたり,シャワーからのお湯を身体にかけたりしていた.どう考えても怪しい.私が風呂場から出て行くのを待ち,風呂場で一人きりになるのを待っている風でもある.一人になったら公共の風呂場で良からぬことをするつもりではないだろうな.私は興味が半分,風呂場を守らなければという義心が半分で,彼が行動を起こすまでは湯舟から出るまいと決意し,のぼせながらもずっとつかっていた.誰か他の人が入って来てくれれば役割を交替して私は出られるのだが,今日は誰も入って来てくれない.「のぼせたー,もうダメかもー」となったところで,ついに彼が動いた.何とそのまま風呂場を出て行ってしまったのである.一人きりになるのを諦めたようだ.結局彼が何を企んでいたかは分からず終いの,のぼせ損であった.いや損ではないな.風呂上がりに飲んだ冷水のうまかったこと.ごくごくと(手は腰にあてずに)何杯も飲んだ.それにしても謎は残ったままだ.いつか確かめてみたい.とはいうものの最初に書いたように彼に会えるのは2,3ヶ月に一度なので,確かめられるのはいつになることやら。