比例道

日本でMMTが通用する理由とその限界点の見分け方

2022年2月22日 07:00 ・ 歴史 ・ 社会 ・ 経済 ・ 元の記事
MMT(現代貨幣理論)は以下の3点を主張する。
  • 自国通貨を発行できる政府は財政赤字を拡大しても債務不履行になることはない
  • 財政赤字でも国はインフレが起きない範囲で支出を行うべき
  • 税は財源ではなく通貨を流通させる仕組みである
米国や日本が財政赤字なのに債務不履行にならないことを説明している。
MMTには賛成派と反対派がいる。
賛成派の主張には日本が大きく貢献している。日本はGDPの2.5倍の借金をして、しかも将来返せる当てはない。しかし、債務不履行にはなっていないし、インフレにもなっていない。これを説明するにはMMTしかないだろうと。
反対派は、返せる当てもないのに通貨を発行(お札を刷り)し続けるなんてムシの良い話があるはずがない、いつか通貨安+株安+債券安+ハイパーインフレになって国家財政が破綻するだろうと主張する。

どちらが正しいのかはまだ分からないが、両者に共通する点がふたつある。それは度が過ぎるとインフレになってまずいことになるという点と、どれくらい通貨を発行したらまずいインフレになるかはどちらもはっきり言わない(分からない)という点だ。

最近の物価の上昇を眺めていると、なぜ日本でMMTが通用するかと、いつまずいことになるかが直感的にわかった。

なぜ日本でMMTが通用する(ように見えているか)はただひとつ、企業が値上げを嫌っているからだ。消費者が値上げすると買わないからとも言える。企業が値上げしなければ、インフレにはならない。当たり前だ。いくらお札を刷ってもインフレにはならない。
そしていつまずいことになるかだが、もう答は出ている。企業が値上げしたときだ。
独占度の高い業種から値上げが始まっている。電力や都市ガスは独占状態かつ生活に必須のものだ。だから簡単に値上げできた。
菓子は複数社が売っている。菓子を値上げするとその菓子を消費者は買わなくなる。ヤマザキ製パンの直近のレポートを見ると、和洋菓子部門は値上げしたので売り上げが減ったとある。そもそも菓子は生活必需品ではない。食べなくてもよい。
生活に必須な食パンや洗剤や歯磨きはどうだろうか。ヤマザキの食パンが値上げされて、パスコとフジパンが値上げしなかったら、消費者はパスコとフジパンの食パンを買う。パスコとフジパンの製パン能力には限りがあるので、小売店では売り切れになるだろう。しかたなくヤマザキの食パンを買う消費者が出てくるだろう。ヤマザキが値上げしなくてはならない理由はパスコとフジパンにも当てはまるので、やがてパスコとフジパンも値上げせざるを得ない。最後はどの食パンも値上げされる。これは洗剤にも歯磨きにも言える。しかし値上げがいきわたるのには時間がかかる。電力や都市ガスのようにさっさと値上げとはならない。

MMTがいつまずいことになるか(=いつインフレになるか)は、企業がいつ値上げするかで決まる。難しい経済理論は必要ではない。企業の経営者がいつ決断するか、ただそれだけ。

---以下余談---
値上げすると買わないという日本の消費者の態度は、めぐりめぐって消費者自身を苦しめている。企業の経営者は利益が出なくなったとき、値上げするよりまずコストの削減を考える。いちばん手っ取り早いコスト削減は人件費の削減だ。社員の給与を減らしたり、社員のリストラをしたり、今正規社員で行っていることを非正規社員に変えたりする。そうなると給与をもらって暮らしている人の収入は減り、仕事はきつくなる。そしてますます高い値段のものを買わなくなる。この悪循環が延々続く。
日本が鎖国しているなら、この悪循環が続いても数百年は耐えられるだろう。しかし、今は外国と貿易している。輸入しないと食べ物もない。そうすると日本だけ値上げしないという姿勢は、日本の労働者を急速に不利な立場に追い込んでいる。

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