比例道
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diary/20080223

イージス艦衝突事故

この事故の第一報を聞いて,船乗りならばみな不思議に思ったことがあるはずだ.イージス艦の見張り員が「漁船の緑灯を見た」と言う点だ.私も夜に航行することがあるので,衝突可能性がある船の緑灯が見えたらそのまま直進(相手が避けるのを妨害しないため),赤灯が見えたら舵を(右が安全)切って避けるというのは条件反射的に身についている.訓練を積んだ海自の隊員もそれは身に付いているはずだ.したがってイージス艦が直進したのはあながち間違いとも言えない.しかし,事故は起きた.考えられる可能性はこうだ.イージス艦と漁船の進行ベクトルの関係は直角ではなく,かなり正対していたのではないか.この場合は漁船の緑灯と赤灯が両方見える可能性がある.そして眼球の波長感度では緑波長の方が赤波長より高いから,両方が見える状況では緑灯の方が目立つ.そこで「緑灯を見た」という証言になったのかもしれない.こうなると一方的にイージス艦が悪いと決め付けられない.それにしても,緑灯だけを視認して赤灯を見落としたのは過失であるし,緑灯の件をブリッジや交代見張り員にきちんと報告しなかったのも過失であるしで,交通事故の責任割合で言えば9:1位でイージス艦の責任となるだろう.
漁船側に不利なことを言うのは気が引けるが,漁船側は自分に優先権があるのだから相手が避けるだろうという甘さがあったのではないか.私が自分で船を操っているときはたとえ自分に優先権があったとしても,相手が大きい場合はこちらが避けるようにしている.大きな船は止まるのも曲がるのも急にはできないのを知っているからだ.漁船側にこの心構えがあれば,今回の事故は避け得たと思う.残念だ.