比例道
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diary/20080716

証拠写真に対する米国と日本との考え方の違い

先日工事現場用デジカメを買った理由は防水性能が必要だったからではない.写真編集検出機能が欲しかったからだ.この機能は撮影した写真のハッシュ値の電子署名を作成し,写真と共に保存する機能だ.こうしておくと,後で写真が編集されたかどうかを専用ソフトで確かめることができる.これは国土交通省に設計データや工程データをデジタルデータとして提出するときのルール中の「写真は編集されていないこと」に対応するためだ.今のところ,どのようにして編集していないか証明するかまではルール化されていないが,今回入手したようなデジカメが増えてくると(現在日本には写真編集検出機能をもつカメラは全カメラメーカー合わせて5機種しかない),標準化あるいはルール化されると予想している.編集の有無を証明する技術は,電子署名法により信頼できる電子署名アルゴリズムが法律として明文化されたのと同じ道をたどるだろう.
米国は写真編集検出機能について進んでいて既に法律化されているのではないかと思い,米国の調査会社の人に尋ねてみた.ところが,米国はこの手の技術は全く進んでおらず,普段の運用でも証拠写真が編集されているかどうかを気にしないという答が返ってきてびっくりした.建築基準というのは存在するのだが,その基準を守って建物を建てたかどうかの証拠(写真)を提出する必要はないのだそうだ.基準が問題となるのは地震等で建物が倒壊したときだが,そのときに事後的に建築基準が守られていたかどうかを判定するのだそうだ.地震の少ない米国だからかなとも思ったが,それだけが理由ではなく文化の違いのようだと調査会社の人は言っていた.交通事故の事故処理でも事情聴取はするが,証拠写真は普通撮らないのだそうだ.また,写真の証拠性についてはデジカメだろうが,フィルムカメラだろうが同じ扱いで,日本のようにインスタントカメラの写真のみが正式な証拠として認められるということもないのだとか.そう言えば,刑事モノの映画を見ると,日本の警察はインスタントカメラで証拠写真を撮影しているが,米国の警察は普通のフィルムカメラで撮影している.フィルムカメラで撮影した写真などいくらでも改ざん(レタッチ)できるのだが,気にしていないようだ.ルールを作るときは常に性悪説に基づいている米国にしてはひどく思慮不足に思える.このままではこう言わざるを得ない.「米国人は頭悪いんじゃないの?」