比例道

ワーキングメモリは短期記憶なの?

2022年3月22日 07:00 ・ 人工知能 ・ 元の記事

前頭前野がワーキングメモリに重要という報告がある。ワーキングメモリを短期記憶の意味で用いているとすれば、短期記憶が海馬体に保持されるという事実と相反する。

前頭前野に障害を受けたヒトは遂行機能障害、易疲労性、意欲・発動生の低下、脱抑制・易怒性、注意障害、非流暢性失語が生じる。これらによってもの忘れをしたように見えることがあるが、実は記憶は正常である。前頭前野がワーキングメモリに重要というのは本当だろうか。そもそもワーキングメモリとは何だろうか。

Cowan (2005)は「ワーキングメモリは長期記憶に含まれる」という説を唱えた。Cowanの説では長期記憶の中で活性化したものがワーキングメモリになると言う。

ワーキングメモリについての目立った研究にはMiller (1956)による「マジカルナンバー7±2」がある。この論文によれば、数字や単語を記憶する場合、人が記憶できる量はチャンクと呼ばれる塊りで表すと7±2個の範囲に収まるとされた。その後の研究で、容量はおぼえる素材の種類に依存し、数字なら約7個、文字なら約6個、単語なら約5個であることが分かってきた。この7±2個というのが人々に刺さって「直前に言われた電話番号を覚えられるのはこういう理由か」とガッテン状態になった。そして直前に言われた電話番号は覚えられるが一か月後にはそれを思い出せないことから、「ワーキングメモリ=短期記憶」と一般人も一部の研究者も思い込んでしまった。

数字や文字や単語を覚えているのは大脳皮質の長期記憶であろう。5個の単語を覚えたとすれば、単語の綴り5個分を丸暗記したのではなく大脳皮質の長期記憶へのインデックスを5個覚えたとなれば、Cowanの説も分からんでもない。しかし数字を7個覚えるのはインデックスとしてではなく、数字をそのまま7個短期記憶として海馬体で覚えているのではないか。そうなると長期記憶は関係なくなる。どうもワーキングメモリと言う概念自体がそもそもおかしいような気もする。

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