民放のFM放送が4局(FM東京,FM愛知,FM大阪,FM福岡)しかなかった時代,FM誌がいくつか出版されていた.私はその中でFMレコパルを良く読んでいた.FMレコパルは私のような子供向けの内容だった.FM誌には,長岡鉄男さんのエンクロージャーの製作記事が載っていて,それを参考にエンクロージャーをいくつも作った.また,松本零士の漫画がたまに載るのもうれしかった.新聞配達をして貯めたお金でコンポーネントステレオ装置を買い,また自作した.いつか大人になったら,自宅に防音のオーディオルームを作って,好きなだけ大きな音でJBLのスピーカーを鳴らそうとか夢見ていた.レコードプレーヤーのカートリッジを宝石のように扱って,カートリッジのコレクションは宝石箱のようだった.ところが(これは以前にも書いたように思うが),FM誌にある言葉が載っていて,その言葉のおかげで私のオーディオに対する姿勢は180度変わってしまったのだ.その言葉とは,

「どんなおんぼろのラジオから流れていても,良い音楽は心に響く」

だった.私は衝撃を受けた.高価なオーディオ機器を崇め奉っていた自分が恥ずかしくなった.音楽は曲を楽しみ愛でることが本質で,音質を云々語るのは邪道だと思うようになった.それからは,レコードやカセットテープを集めることにお金を使い,壊れない限りオーディオ機器を買い換えなくなった.当時のチューナーやアンプは40年経った今でも現役で音楽を鳴らしている.最近はハイレゾオーディオが流行っていて,しかもそれが低価格のラズベリーパイとDACで実現できるものだから,かつてのオーディオ自作ブームが再来したような様相だが,私は先に述べた理由から,ハイレゾには興味がない.ただ,省エネというかエコは大事だと思っているので,40年前のヤマハのA級アンプで音楽を聴くよりは,ラズパイとDACとD級アンプで聴いた方が地球に優しいのかなと思ったりしている.その目的ではラズパイをいじるかもしれない.