円周率は3で良いのでは

高校までは円周率は3で良い

最近、円周率を3で教えているらしい。そのことがゆとり教育の愚かしさの代名詞になっている。しかし、私は円周率は3でかまわないと思う。と言うよりは3の方が良いと思う。なぜ3が良いのか。
πの意味の本質を教えない高校までの数学では、πの近似値の桁数を多く暗記するより、 円や球の大きさの度合いが(例えば矩形との比較として)直感的に分かる方が子供にとっては重要だからだ。例を示そう。

円の面積は、円の半径を一辺とする正方形の何倍か

πr2では直感的に分からない。3r2ならば、ははーん3倍くらいだと分かる。円の直径を一辺とする正方形と比べると3/4くらいになることもすぐに分かる。

球の体積は、球の半径を一辺とする立方体の何倍か

4/3πr3では同じく分からない。4r3ならば、すぐに4倍だと分かる。ついでに言うと球に内接する正8面体の体積は4/3r3というのを求めた後では、球はそれに比べて3倍の体積を持つことも分かる。正8面体と比べることで球の体積は見た目よりも意外に大きいことが分かると思う。

円周率=πが役に立つのはいつからか

工学部では複素数やフーリエ変換が必要になったときからで良い(例外的に機械工学科では回転機構をもつメカの設計で3.14が必要になるが、これはπが必要なのではなく定数の精度が必要なだけだ)。理学部はもちろん1年生から必要だ。その他の学部では(たとえ医学部でも)3のままで良いだろう。私が円周率=πであることの重要性を本当に認識したのはe=-1を頭の中でイメージできるようになったときだ。それまでははっきり言って円周率=3で良い使い方しかしてなかった。

おまけ

ゆとり教育を糾弾する人たちの論法に「ゆとり教育の結果、太陽が東から昇る事を知らない子供が○○%もいるではないか」と言うのもある。初めてこれを聞いたとき、このような無意味な暗記を尊重する大人が一番愚かに思えた。私も未だに太陽がどちらから昇るかを暗記できていない。と言うよりも、北を向いて立ったときに右が東か左が東かを暗記していない。しかし、地図のどっちが東かが分からない私でも大学の自動車部でラリーのナビゲーターはできた。東がどっちか分からなくても太平洋から日が昇るのは経験で知っている。暗記することが大事な事柄もあるが、東と西の暗記の優先順位は低いだろう。(実はヨットのスタボー側がどっちかを半年乗らないと忘れてしまう。これは忘れると困るものの例だ。)

おまけのおまけ

球の体積の公式を忘れてしまい、自分で積分して求めたことがこの文章を書くきっかけとなった。布団に横になって目を閉じてから始めたのだが、最初の1時間で導き出した解は2/3πr3だった。先ほどの正8面体との直感的な比較で、間違っていると分かったので、さらに計算を続けた。 結局4/3πr3にたどりつくのに、3時間はかかった。直交座標で積分したのでcos3θの積分に時間を費やしてしまった。こういう計算は道具が何もいらないパズルなのに、なかなかに面白く導けたときの喜びも大きい。時間があればぜひお試しあれ。